東北学院大学文芸同好会

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奇題譚 - 詩雨 URL

2011/07/24 (Sun) 09:11:19

私しか使わないという悲劇のため少々トピックを弄らせていただきます←
ということで、このトピでは奇題譚と称しまして、妙ちくりんなお題で掌~短編を書かせていただくことに致します
お題は自分で作るも良し、過去レスを辿るも良しです。
既存のレスは放置するのでホラー苦手な方はしばらく下へ下へ……

「境界のある町」 - 詩雨 URL

2011/07/29 (Fri) 00:03:57

それじゃあ参りましょう。
苦手な方は即BACK!
B級スプラッタ注意なのですよー


「境界のある町」
 この町のどこかに、『境界』があるらしい。
 クラスの噂では、この世とあの世を隔てる『境界』だとかいう話だ。
バカげた話ではあるが、実際にこの町での行方不明者の数は他よりも多い。
突如忽然として姿を消し、それ以後の消息がまったくわからないという事態がよくあるのだ。その多くは町の外からやってきた人であるが、稀に町の人がいなくなることもある。いずれにせよ、帰ってこれないのだから真相はわからないのだけれど。
それはまるで、突然訪れる死に似ていた。

 母が私にスーパーに買い物に行くように言ったのは、とある日の夕方だった。晩ご飯に使う野菜がちょっと足りないとかで、私が買いに行くことになったのだ。
 近所のスーパーに行くだけと、私はちょっぴり物ぐさして、部屋着にスニーカーという軽装で家を出た。
 まだ外は明るかったけれど、私はリビングにあったペンライトを借りて持ち出した。
 スーパーへは、十五分ほどで着いた。閉店間近だったらしく、店員さんたちが忙しく台車やダンボールを片付けていた。
 目当ての品を買い終えた私は、すぐさま家へとって返した。
 住み慣れた町とはいえ、夜の闇はあまり心地いいものではない。
 ましてや、奇怪な都市伝説があるような町の夜ではなおさらだった。
 空は気味の悪い紫色に染まり、夜が静かに始まろうとしていた。
 突然、路地から猫の鳴き声が聞こえた。
 あまりに弱々しい、今にも死にそうな子猫の声だった。
 思わず振り向き、路地を窺った。
 路地に訪れた闇は、子猫の姿を完全に覆ってしまっている。
 私は持っていた懐中電灯で、路地の先を照らした。
 ちらりと、朱いものが見えた。袋のような、小さなもの。
 再び、鳴き声が聞こえた。
 袋の中から聞こえてくる。
 まさか、と思い、袋を照らす。

―――息を呑んだ。

 朱い袋だと思ったものが、原型がわからないほどぐちゃぐちゃにされた子猫の肉塊だった。内側と外側をひっくり返したように、胃や腸があたりに撒き散らされ、頭に当たる部分に眼球がふたつ、埋め込まれるように乗っかっている。
 飲み込んだ息に酸いものが混じり、喉を伝って口元まで上った。
 口を手で覆い、なんとか堪え、その場を離れようとした。
 もぞり、と眼球が動いた。ぐじゅっと果実を潰すような音がして、眼球が肉塊から零れ落ちた。綺麗な球形の白い球がころころと転がり、黒目をこちらに向けて止まった。
 私は走り出した。
 まさか。
 まさかまさかまさかまさかまさか。
 そんなはずはない、そんな馬鹿な話が、あり得ない、嘘だ、違う、なんで、何故、どうして、『どうしてわたしが?』
 空はすっかり暗闇に閉ざされていた。
 周囲の家が、薄ぼんやりと明かりを灯している。
 そんなはずはない、そんなはずはないと自分に言い聞かせながら、私は自分の家へと急いでいた。
 きっと嫌なものを見て不安に駆られているだけ。家に帰れば杞憂に終わる。そう、絶対。
 私は祈るように家のドアに鍵を差し、乱暴に鍵を開けてドアを開けた。
 見慣れた玄関、見慣れた照明。
 なんともない、私の日常。
 台所で、母が晩ご飯を作っている音がする。安堵とともに、脱力感が訪れる。
 やっぱり杞憂だった。偶然同じ通りを歩いているサラリーマンがストーカーに見えたり、曲がり角に包丁を持った男が隠れているんじゃないかとか思ったりするレベルの、小心者の心が作り出した杞憂。
 馬鹿なことに怯えてないで、今日は早く寝てしまおう。と、買い物袋を台所に持って行ったところだった。
「あら、ずいぶん早かったのね」
 部屋に異質な空気が流れている。いや、淀んでいると言えばいいだろうか。鼻に付く、嫌な臭いが部屋に充満していた。なんとも、血生臭いような。
「ここここここここここここれでででででででででようやややややく晩ご飯の支度ががががががが」
 言い終わる前に私は駆け出していた。
 母は、顔の皮を削がれ、腕は変な方向にねじ曲がり、わき腹から内臓を滴らせながら、まな板で自分の指を刻んでいた。
 気が狂いそうだった。
 さっきまでの世界は私を置いてどこかへ行ってしまったのだ。
『私は、境界を越えてしまった』
 ここはもう死の世界。還ることの出来ない永遠の悪夢だった。
 戻れない今となっては、私はただ、壊れたように笑い続けるほか無かった。

K-FILE:1 - 詩雨 URL

2011/11/10 (Thu) 03:46:15

むしろ嘘新聞とかに載せるべき代物かと思います
どうぞご笑覧下さい。

昨日未明、市内コンビニエンスストアにて恐るべき事件が起こった。
このコンビニに客として来店したAさん(仮名)は店内を一通り回ったあと、カウンター脇で蒸してあった肉まんを発見、購入した。
店を出て肉まんを食べようとしたところ、下に張り付いている紙がぺったりとくっついてしまい、なかなか取れないという事態に陥った。
Aさんは冷めてしまうことを懸念し、力任せに引っ張ることにしたが、その拍子に肉まんの底の皮が紙にごっそりと持って行かれるという悲劇に見舞われることとなった。
肉まんを販売していた店員は取り調べに「そんなことになるとは思わなかった」と話しており、世論からも現代っ子のマニュアル人間化を懸念する声が上がっている。
大手コンビニストア各社は「事前に紙を一度剥がしておくことで対処させていただきたい」と記者会見で話した。

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